突然ですが質問です。
人類は猿人⇒原人⇒旧人⇒新人と進化しました(それぞれは別種です)が、最終的に生き残ったのは我々新人でした。
近年の研究で、その理由は何と考えられているでしょうか?



正解は「明確な言語によるコミュニケーション」です。
コミュニケーションの意味については、辞書的には様々な解釈がありますが、教育では「相互の意思疎通」として一般的に使われます。

我々新人は、コミュニケーション能力を手に入れたことによって、次のようなメリットを得ることができ、他の人類との生存競争に勝利しました(旧人は新人に取り込まれた(同化された)ようですが)。
・狩りの際に互いの考えや作戦を共有して効率的に狩りができる。
・自分の考え・感情を的確に表現することができる。
・お互いの意思が通じ合うことによって安心感・満足感を得ることができる。 などなど

つまり、本能的に、我々新人はコミュニケーションがしっかりと取れている相手に対して安心感や満足感、つまり信頼を感じることになります。これが互いにできていることが信頼関係です。少々古い心理学用語ですが、教育ではよく「ラポール」という言葉が使われます。ネットで調べると様々な理論が出てきますが、要は信頼関係の築き方です。

ラポール(信頼関係)を築くためにはどうすれば良いのか。
これは私の教員・指導者としての経験上から間違いなく言えることですが、「1対1の対話」と「相互の意思疎通」です。
教員やスポーツチームの指導者であると、どうしても状況として、教員(指導者)対生徒(選手)ということになります。「1対1の対話」ではなく、「1対30の対話」や「一方通行の意思伝達」となってしまう場面が多くなります。
例えば、とても有名な方の講演会を聞いて、非常に感銘を受けたとします。ただ、その講演会は1対100の講演会なので、「1対1の対話」ではありません。あなたと講演者の信頼関係を築くことはできないでしょう。
どれだけ素晴らしいことを言っている優れた教員でも、教壇の上からクラス中に向かって話しかけては、一人一人との信頼関係は生まれません。

なお、いわゆる個人のファンは信頼関係ではありません。好意を持っている側の一方通行の意思伝達です。(恋愛なども同じですな・・・)


スポーツ現場では、「1対30の対話」や「一方通行の意思伝達」を無意識にやってしまっている指導者が非常に多いです。
http://thinkaboutbb.blog.jp/archives/16766090.html

上の記事が取り上げたのが良い例でしょう。

「てめー、何でチャンスで初球を打ち上げてんだ!馬鹿野郎!」
確かに初球を打ち上げたことはよくありませんが、これでは「一方通行の意思伝達」です。

次に、

私「初球からの積極性はよかったな。あれだけ高いフライということは、しっかり振ってたし、紙一重だろう」(まず結果までの過程を承認します。苦笑いで言いましょう)
私「初球は狙ったボールだったのか?」(結果について疑問を投げかけます)

選手「いえ・・・。ただ、甘かったので手が出てしまいました」

私「そうか。なるほど。けど、相手バッテリーからしてみればどうだろう。2アウト満塁、打者は4番。初球を打ち上げてくれたら、ラッキー!って思うよな」(反省点を指摘)

私「君は簡単に三振するバッターじゃないし、何球か待って、ボールカウントが増えれば、バッテリーも困って、より狙いが絞りやすいんじゃないかな。そういう選択肢もあるということを覚えていれば、もっと余裕をもって打席に入れるよ」(戦術面の話)

「いえ・・・。ただ、甘かったので手が出てしまいました」という選手の考え、意見を一つでも聞き出す。これが「1対1の対話」「相互の意思疎通」ができているコミュニケーションです。


「今日の調子はどう?」「昨日なにしたの?」「最近野球上手くなってる?楽しい?」「目標は何だっけ?」

このような簡単な会話でも十分コミュニケーションができています。選手と「1対1の対話」「相互の意思疎通」を繰り返すことによって信頼関係は形成されていくのです。
これは結構大変なことです。人数が多いチームであればなおさらです。ただ、本当に良い指導者というのは、このような地道な信頼関係づくりを重視しています。
私が高校球児だった時の指導者も、昔チームを甲子園に導いた方でしたが、見た目はかなり怖そうでも、体罰は無く、選手の前で冗談を言って笑わせたり、一緒に練習に参加したり、そして何より選手一人ひとりとよく会話をされる方でした。怒る時はものすごく怖いのですが、信頼関係があるので、言葉もすんなり入ってきますし、外から見るほどの怖さはありません。

人数が多くて一人では声をかけられないのであれば、指導者で練習毎に「今日は俺が○○君に声をかけるよ」と分担するのも良いでしょう。

では、この信頼関係が形成すると、チームはどうなるのか。それは次の機会といたします。

今回の話は、「指示が通りやすいチーム(組織)をつくる」と関連性のあるものです。こちらもご覧ください。
http://thinkaboutbb.blog.jp/archives/19266990.html