現在、U18の高校野球日本代表が大会中です。
昨日は台湾代表に負けてしまいました。
そこで、こんな記事が出ました。

「甘ないんじゃ!」ミス連発U18に仲井ヘッドが喝
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190902-09020953-nksports-base

台湾戦に負け、帰りの際に仲井宗基ヘッドコーチが
「そんなんで世界一取れるんか! 虚勢を張んな。上っ面なんていらん。そんな甘ないんじゃ!」
と選手たちに発言しました。

この発言をどう思うでしょうか?
「負けたのは選手たちの気が抜けてたからだ。仲井ヘッドは喝を入れたのだ。」

と多くの人が思うかもしれません。しかし、実は大きな大会、特に今回の日本代表のような、選手も指導者も「負けられない」という気持ちが強すぎる場面において、今回の声掛けは心理学的には最悪です。

心理学において、「エミール・クーエの四大法則」というものがあります。
① 意思は想像力に絶対勝てない。
② 想像力は意思の力の二乗に正比例する。
③ 意思と想像力が同調している場合、そこから生じる力量は、両者の和ではなく、積によってはかられる。
④ 想像力は誘導可能である。

簡単に言うと、脱力と適度な緊張感があり、「楽しんでいる」「上手くいく」良いイメージを持つことが成功の確率を最も高めるということです。
逆に「絶対に負けられない」という、実は人間にとってマイナスに作用する想像力が強すぎると、必要以上に緊張を高めてしまい、ミスにつながります。

今回の仲井ヘッドの言葉を見てみましょう。
「そんなんで世界一取れるんか」
「虚勢を張んな」
「上っ面なんていらん」
「そんな甘ないんじゃ」

見事に全て否定形であるということに気付いたでしょうか?
これはハッキリ言って、考え得る限り最悪の言葉を並べてしまっています。
「高校球児だからこれぐらい言われても大丈夫だろ」「日本代表だから言われて当然だ」と思っているかもしれませんが、それは大きな間違いで、本職の日本代表の指導者たちは、試合前後の選手への声掛けを非常に重視しています。それぐらい人間はプレッシャーや想像力が強く働くのです。

もちろん、U18の指導者は高校野球で実績がある方々ですから、選手たちにフォローを入れていると思います。また、何度も甲子園を経験している仲井ヘッドもこのような言葉が良い作用を生まないということはわかっていると思います。

では、なぜこのような言葉が出てしまったのか。
それは、日本代表という国内最強のチームを預かっている指導者のほうこそ「負けられない」というプレッシャーが強いからです。結果が出せなければ、一番責められるのは指導者だからかもしれません。
だからこそ、わかっていても、今回のような発言が出てしまいがちなのです。

このようなことを指導者は常に意識して、試合前の言葉を選ばなければなりません。

では、試合前に選手たちにどのような声掛けをすればよいのか?
長くなりましたので、それはまた次の機会とします。