私は、競技者の実力やモチベーションを分類する場合、ライト層・コア層のように表現することが多いです。
この言葉は、元々「ライトユーザー」「コアユーザー」というような、特定のサービスの利用度合いを表現するものですが、競技などにも援用できます。
今回は、まず、ライト層・コア層に加え、準コア層という言葉を勝手に作って、競技における分類をしてみたいと思います。

①コア層
いわゆるガチ勢。競技力も高く、アマチュアでは全国大会、将来的には社会人チーム、オリンピックやプロスポーツを目指すなど、高いモチベーションを持っている層。

②ライト層
趣味として競技を楽しむ層。
※学生時代コア層であっても、大半の人はプロにはなれないので、社会人になればライト層になる。

③準コア層
実力的にはコア層に準ずるが、現状のモチベーションとしてはライト層と同じ。コア層・ライト層の中間的存在で、どちらの層にも転化する。


この中で、プロ・アマ問わず、その競技の発展にとって最も重要なのは、ライト層です。
野球で考えてみましょう。
日本の野球人口は約700万人です。そのうち、NPBの選手・指導者は、およそ1000人ほど(独立リーグを入れればもっと増えるでしょう)。
いくらプロスポーツのレベルが高かったとしても、消費者として残りの競技人口700万人(さらにファンには野球未経験者もたくさんいる)がいなければ、プロスポーツは成り立ちません。

プロ野球などでは、上達ではなく競技に親しむことを目的とした初心者向けの教室を定期的に各地で開いたり、無料チケットを配布して試合を観戦してもらったりするなど、ライト層の厚みを増すことに重点を置いています。もちろんライト層だけでなく、競技未経験者の新規ファンの拡大にも力を入れているわけです。
そして、ライト層やファンが観戦したりグッズを購入したりした収入で、プロチームが成り立っています。
このようなライト層の下支えがあるからこそ、コア層が目指すべき舞台が存在し、コア層もそこを目標に頑張ります。

早稲田大学の
平田竹男教授は、逆台形モデルという考えを示しています。
http://www.waseda.jp/sem-hirata/kenkyuusitu.html
daikeimodel


しかしながら、アマチュア指導者には、ライト層の競技継続を重視するという考え方が薄いように思います。
その原因は、特に中学生の部活動ではコア層とライト層が同一チームに存在しているということにあります。

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以前の私もそうでしたが、指導者から見るとどうしても技術的にレベルの高い選手に目が行ってしまいます。コア層の選手の方が、教えたことをすぐに実行してくれますし、効果が出てくるのがすぐにわかるので、優先的に教えたくなってしまいます。
逆に、ライト層の選手は、モチベーションを上げるようなメンタルケアを行いながら、技術的にも1から手取り足取り教えなければならず、効果が出るのも時間がかかる(出ないこともある)ので、指導者にとっては大変です。

また、中学3年間・高校3年間という、それぞれ短い期間でチームを完成させてトーナメント大会の勝利を目指すためには、当然技術の高い選手が試合の中心になっていきます。
その結果、ライト層からすると、あまり上手くもならないし試合にも出られないしで、その競技を嫌いになったり、直接的に関わらなくなってしまうということは、少なからずあると思います。


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ライト層が競技から離れてしまうと、回りまわって、その競技の日本全体のレベルが低下することになります。こういった視点も、アマチュア指導者は持つべきでしょう。

最後に、私がこのライト層を重視するようになったきっかけをお話しします。
とあるセミナーで、Jリーグのユースチームの指導者の方が、次のような話しをしていました。

プロに行くのは1万人に1人。プロに行くような選手は誰が見ようが見まいが勝手に行く。我々アマチュア指導者はプロに行かない9999人が競技を続けることができるよう、しっかりと育てましょう

次回は、ライト層の育成について考えていきたいと思います。