これからの野球を考えよう

教員・野球部顧問という立場から、今後のアマチュア野球や部活動のあり方について考えていきます。また、日々精力的に頑張っている指導者の方々の指導技術が向上し、選手たちがより良い環境で野球ができるようになるよう、私の指導論も紹介します。

カテゴリ:指導者の教科書 > バッティング

さて、コロナで休校中、部活動はもちろんないので、子どもも指導者もなかなか運動もできません。
なぜか、縄跳びがものすごく売れているとか。確かに、公園で縄跳びをしている人が多い。
私も、夜中に空き地にでも行って、軽く素振りぐらいはしようかなと思っています(変質者に間違われないようにしないと・・・)。

さて、素振りと言うと、練習の最後に「素振り100本!」みたいな光景をよく見ます(私も現役時代、やらされましたが)。

個人的に、素振りは回数をこなしてもあまり意味がないと思うので、私が思う素振りをする際の3つのポイントを紹介します。
是非、子どもたちにも教えてあげてください。

①試合を想定し、しっかりと投手を見て、タイミングをとろう
素振りをしている子どもを見ると、下を見てしまったり、下半身の動きが疎かになっている選手が多いです。これでは、試合で使えるスイングは手に入りません。下を見てしまうと、スイングはダウンスイングの軌道になってしまいますし、下半身が使えなければ、強い打球は打てません。
一球一球、試合を想定し、投手を見て、タイミングを合わせてスイングしましょう。
youtubeなどで、プロ野球の試合の音声を流しながら、世界に入り込んでイメージして行うのもおすすめです。

②素振りは20回、一回一回試合での本気のスイングで
野球は持久力のスポーツではなく、一瞬で力を爆発させることが重要です。そうなると、素振り100本とか、1000本というのは、意味がありません。
例えば、試合で4打席立つとして、1打席でスイングする数は、3~4回あれば多い方でしょう。
そうなると、1試合では、4×4=16回全力でスイングできれば良いわけです。
それより少し回数を増やして、20回のスイングを、1回1回自分のベストのスイングで全力で行えば良いと思います。
恐らく、筋肉の疲労は、100回やったよりもあると思います。

③動画を撮ろう
最近では、学校で一人一台タブレットが配られたり、子どもでもスマホを持っていることが多いです。
三脚を使ったり、イスに置いたり、家族に協力してもらったりして、その日の20スイングを録画しましょう。
そして、終わった後、お風呂から上がってストレッチをしながら、自分のスイングを冷静にゆっくり見直しましょう。「明日はこうしてみよう、こういう意識を持ってみよう」と、自分で考え工夫することによって、どんどんイメージは動きへと変わっていきます。
誰かのまねをするだけだったり、言われたとおりにする選手よりも、自分で考えて試行錯誤する選手の方が、遠回りに見えて、最も成長します。


さて、バッティングにおいて、しっかりとパワーポジションを作り、内転筋を使うことによって全体重をボールにぶつけることができるようになるわけですが、この感覚をどうやってつかむか・・・。

私は理論的なことを説明して、「こんな感覚だよー」ととにかく伝えて、あとはティーなどで量をこなしつつチェックすることが多かったのですが、指導していた選手が「大きな風船を内転筋で潰す感じ」ということを言っていたので、「なるほど」と思い、最近はこういったものを使うことがあります。

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こんな感じのストレッチボール?です。
これを股に挟み、潰す感覚で内転筋を締め、バットを出していきます。
これで、バットを腕で出そうとしたり、軸足や腰を回そうとせずとも、内転筋を締めたら自然とバットが出てくることをわかってくれます。
ただ、これは小さすぎるので、できればバスケットボールぐらいの大きさで弾力のあるボールの方が良いと思います。サッカーボールでもいいかもしれません。
あくまでこれは感覚をつかむだけで、実際のスタンス幅は、内転筋をしっかり使える範囲で可能な限り大きく開いた方が良いですね。

バッティングー下半身の使い方①
http://thinkaboutbb.blog.jp/archives/21971218.html

①では、従来の「腰を回せ」「軸足を回せ」という指導では、プロ野球選手のような動きにはならないことを説明しました。
それでは、どのように体を使えばいいのでしょうか?

この体の使い方に気が付いたのは、実は私が野球をやっていた時ではなく、大学生になってから、格闘技をやっていた時のことです。
パンチを出すときも、やはり腰を回せ、とか、軸足はこう回す、とか言われるわけですね。しかし、なんか遠回りのようなパンチにしかなりません・・・。

そこで、色々と試していたところ、両足の内転筋を締めるとかなりパンチが速く・まっすぐになることに気が付いたんですね。まさにストレート。

実際、野球でもこの内転筋の締め方を使ったら、プロ野球選手と同じような形になり、打球のスピードや飛距離が伸びました。また、体が早く開かないので、崩されても下半身で変化球を拾ったりすることも可能になりました。
以下の絵は私のイメージです(下手ですみません)。

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後ろ足の内転筋を前足にぶつけた瞬間に、前足の内転筋も締めて壁をつくるというのが私の感覚です。バッティングにおける壁と言うと、上体が突っ込まないように、肩―腰のラインで捉えている人も多いと思いますが、私は前足の内転筋で壁をつくるものだと考えています。

この下半身の使い方によって、全体重を前方(ボール)に対してぶつけることができます。そして、その勢いで、前回話した、「腰が回る」「軸足が回る」「後ろ足が前方に移動する」という動きが、結果的に起こるのだと考えています。。
「前足の内転筋も締める」というのがなかなか難しくて、指導していると、やはり前足の内転筋の締めが弱くて下半身が流れてしまったり、上体が突っ込んでしまう選手が多くいます。ここの感覚をつかむと、鋭いスイングと打球がみられるようになり、なによりも、打ち損じが明らかに減るんですね。
それだけ、体が安定しやすいということです。

日本の場合、子どもの頃から1つのスポーツに集中しがちですが、アメリカのシーズンスポーツ制のように、色々なスポーツに触れることで、あらゆるスポーツに対応できる体の使い方が身につくように思います。

前のバッティング指導法の更新から時間がかかってしまいました。
下半身の使い方は教え方が難しいので、どうすればよりシンプルに伝えやすいかを考え、様々な選手に指導して教え方をまとめていました。

さて、バッティングにおける下半身の使い方として、昔から、言われていたことは次のようなものです。
「腰を回せ」
「軸足の母指球で回れ」
「軸足を回せ」
多くの人はこのような指導を受けてきたのではないでしょうか?私もそうです(ただ、今思い出すと、プロ選手のトレーニングコーチをしていたコーチは、私が指導者になってから気づいた下半身の使い方をすでに指導されていましたが)。

これから解説していきますが、私は指導するときに「軸足」という言葉を使わず、「後ろ足」「前足」という言葉を使います。
「軸足」という言葉は、どうしても回転をイメージしてしまうからです。

では、次の二つの動画を見て下さい。





2人の後ろ足に注目してください。柳田選手は、ものすごい勢いで前方に移動しています。
また、スタントン選手はなんと後ろ足が浮いています。



イチロー選手も同じですね。

「腰を回せ」「軸足を回せ」という下半身の使い方では、体重移動はできず、このような動きは絶対に起こりません。打ち終わりの形も、プロ野球選手とは違うものになっているはずです。
バッティングの下半身の使い方において大切なのは、前足を上げて後ろ足に乗った体重を、前足が着地したら一気に前方に移動し、ボールに向かって全体重をぶつけるということです。

「腰を回せ」「軸足を回せ」という指導では、後ろ足から前足への体重移動がしっかり行われないどころか、小学生など、まだ骨が出来上がっていない選手は、腰椎分離症の危険性が高まります。

腰や後ろ足の回転は、体重移動をしてスイングが行われる際に「結果的」に起こるものです。結果的に起こるものですから、その動作を重視すると、間違った使い方になってしまいます。



内川選手の外角打ちの映像を見て下さい。打つ瞬間軸足は回っていません(打ち終わった後は、力を開放するため、流れで回ります)が、これだけ強い打球が打てています。
つまり、バッティングにおける下半身の使い方というのは、①後ろ足から前足への体重移動→②体重移動の勢いとバットの重さによる全身の回転、であると考えています。

なお、後ろ足が前方に移動するのも、体重移動によってあくまで結果的に起こるものですので、たまに「後ろ足を前方に移動させればいい」と勘違いする選手がいるので、注意してください。



落合博満選手のフォームです。
体重移動は完ぺきに行われていますが、後ろ足は前に移動しようとはしていますが、最初の位置のままです。
後ろ足が前方に移動するかどうかは、あくまでその人の体の使い方の一つです。最も大事なのは前足への体重移動なので、この動作は重要ではありません。

昔のバッティング指導書などを読むと、上体の開きをおさえるために
「へそを捕手の方向に向ける」などが書かれたりしています。

恐らく、体を逆方向にひねって、投手方向への開きをおさえるという発想なのでしょうが、体の開きというのはスイングの瞬間に起こるものなので、割れの段階で捕手方向にひねっていては、スイング時に体はより早く開いてしまいます。

ちなみに、「開く」という状態は、スイング時に肩や胸が腰より先行してしまう動作を指します。無論、スイングした後はバットの遠心力によって上体は必ず開いていきます。
よく、アウトステップなどが開きを生み出してしまうという話がありますが、確かに開きやすくはなりますが、絶対ダメというわけでもありません。

例えば、インコース打ちの名手、落合選手や二岡選手を見てみましょう。





足がアウトステップしているので、開いているように見えますが、上体は腰より先行していません。なので、最後までしっかりボールを見つつも、アウトステップによりインコースのミートゾーンを広げているのですね。
実際、私もこれに気がついて実践したところ、インコースに素早く反応して引っ張り、レフト線に入れることができるようになりました。

割れの時、前の肩の肩甲骨をしっかりと引いて伸ばすことが重要です。これによって、上体をあまりねじらずにバットはトップの位置に置いて距離を広げることができます。

また、これは今度書こうと思いますが、下半身を最初から回転させずに並進運動で体重移動を行うことによって体はすぐに開きません。
↓でも簡単に説明しています。
誤った指導の事例 打撃 腰(軸足)を回せ
http://thinkaboutbb.blog.jp/archives/16801564.html

日本ハムファイターズの田中賢介選手のフォームは、是非参考にしてほしいです。




 

一番下の動画において、外角打ちの際には、軸足は回転していないことに気がついたと思います。最初から後ろ足の回転ばかり考えてしまうと、体はすぐに開いてしまいますし、打てるコースが限られてきてしまうのです。

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